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冠を持つ神の手

219 名前:冠を持つ神の手 ルージョン愛情A 1/5[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 01:55:37 ID:VhMcrR7Z
 <序盤のあらすじ>
 舞台となる異世界の王国リタントに暮らす人々は、みんな無性別で生まれてくる。
 彼らは数え年で15になると神殿に赴き、男女どちらを選ぶかを宣誓して性分化を遂げる。
 リタントでは王制もまた特殊なものだった。王は血筋ではなく「選定印」によって選ばれる。
 およそ20年に一度、額に不思議な印を持つ者が生まれ、その人物が成人(15歳)すると玉座に就く。
 
 6代目国王候補が成人する一年前のこと、辺境の村でもう一人の選定印の持ち主が発見された。
 彼の名はレハト(主人公。名前は変更できる)。字も読めない貧しい農民だが、額には印が輝いていた。
 印を持つ者が同世代に二人出ることは史上初であったが、放ってもおけないからとレハトは城へ招かれた。
 一人目の王候補と同じく14歳のレハトは、様々な思惑渦巻く城内でで成人までの1年をすごすことになる。
 
 
 <ルージョン愛情A>
 レハトは城内にある神殿にて、女と見まごうような18歳の美青年・ティントアと出会った。
 ティントアは敬虔で将来有望な神官で、ぼやっとした性格だが神を語る時だけはよく舌がまわった。
 レハトは神殿に通ううちにティントアと仲良くなり、友情を深めていった。
 
 城内の中庭を歩いていたレハトは、隅にティントアが二人いることに気づいた。
 どうしてティントアが二人いるのか、怪しんでいたところ、片方のティントアがレハトに気づき、呪文を唱えた。
 「命ず命ず命ず! 我が天幕に進入せし者を引きずり出せ!」
 レハトは見えない力で二人のティントアの前に引きずり出された。
 もう一人のティントアは、ティントアと瓜二つの姿をした双子の妹・ルージョンであった。
 
 ルージョンは魔術師であり、堅牢に守られている城内に魔術を使って進入し、
 兄の恰好をして身分を借りては、なにやら探し物をしているらしかった。
 この世界では、選定印という不思議なものはあれど、基本的に魔術の類は存在しないとされている。
 魔術師は迷信のものであり、忌むべきものとされている。
 ルージョンは結界をはってその中でティントアと会話していたのだが、
 レハトは無意識にそれを突き破ってしまっていたらしい。
 魔術師である自分の存在を吹聴するなよとレハトはルージョンと約束させられた。
 
 220 名前:冠を持つ神の手 ルージョン愛情A 2/5[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 01:58:36 ID:VhMcrR7Z
 ルージョンは探し物のためにかなり頻繁に城を出入りしていた。
 レハトは彼女や魔術に興味を持ち、しょっちゅうルージョンに会いに行くようになった。
 魔術師としての素養を持っているというレハトは、ルージョンを師匠にして魔術を教わるようになる。
 「好奇心旺盛なのは結構だが、お前を見ていると、その結果を考えているのかどうか、大いに気にかかるね」
 ルージョンは呆れたようにそう言うが、いわゆるツンデレで、少しずつ心を開いて過去をも語るようになる。
 
 
 ルージョンとティントアは孤児で、「神の家」と呼ばれる孤児院のようなところで育ったという。
 育ての親たちは二人の見分けをつけることができず、その時々によって、
 「良い方」を「ティントア」、「悪い方」を「ルージョン」と呼んだ。
 ティントアはどんくさいため大抵の場合は「ルージョン」で、ルージョンが「ティントア」だった。
 
 しかし、聖書を読むときだけはルージョンが「ルージョン」だった。
 貴方たちは親には捨てられたけど神様は受け入れてくれている、
 そんな育ての親たちの言葉が嫌いで、ルージョンは神を信じておらず、そのため聖書を拒絶していた。
 ルージョンはいつか親が迎えにきてくれることを信じており、読み書きすらしなかった。
 困り果てた育ての親たちは、一片の紙切れをルージョンに見せた。
 それは、双子が捨てられた時に共に置かれていたものだという。
 実の両親の言付けが読みたいのなら文字を覚えなさい、ルージョンはその誘いに頷いた。
 そうしてルージョンは読み書きを覚え、聖書も読み、ようやく紙切れを渡してもらえた。
 
 「ふたりめひかかってつまはしんだから、ふたりはむりで、おねがいします」
 
 紙切れにはそう一言だけ汚い文字で、ルージョンが生まれたせいで双子は捨てられたのだと示されていた。
 やがて神の家は火事によって焼失した。
 ルージョンはそれを期に失踪し、敬虔なティントアは神官の家の養子になった。
 「良い方」だからティントアは「ティントア」になり、「悪い方」だからとルージョンは「ルージョン」を名乗るようになった。
 その事を話し終えたルージョンは「私には捨てられそうにないから」と紙切れをレハトに渡した。
 
 221 名前:冠を持つ神の手 ルージョン愛情A 3/5[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 02:01:49 ID:VhMcrR7Z
 ルージョンは探し物のために城内に出没し、兄の前にも姿を現したが、
 基本的には極力兄に近づかないようにし、それでも接触を持とうとしてくる兄に冷淡に接していた。
 それは、忌まれる魔術師である自分に近しい者であることがばれたら、
 兄の立場が危うくなるという思いやりのためだった。
 
 魔術の腕がかなり上がったレハトは、城内にてちらほらと魔術の痕跡を見つけるようになった。
 それをルージョンに報告すると「やっぱりここにいるのか」とルージョンはつぶやいた。
 ルージョンの探し物とは、その人物が持っているものだという。
 その人物とは、神の家焼失後にルージョンを拾った老魔女の孫で、ルージョンの兄弟子にあたる人物だという。
 
 人気のない屋上へ出たレハトは、魔術によって結界が張られていることに気づく。
 しかし、その結界を押し破って無理矢理中に入って行った。
 その中では、ルージョンが見知らぬ男と相対していた。
 その男こそが、ルージョンの兄弟子である、魔術師のドゥナットだった。
 
 ルージョンは涙ぐみながら、老魔女が病で死の淵にいる、
 顔を会わせたいとドゥナットを探しているのだと訴えかけていた。
 ドゥナットはルージョンを嘲笑い、そもそもどうして自分が家を出るはめになったか忘れたのかと訊く。
 「ひどい話だよな、合意の上だったのに俺ばっかり泥かぶってよ」
 ドゥナットはかつて、まだ性未分化のルージョンに手を出そうとして老魔女の怒りにふれた。
 あの時の続きをさせるならば帰ってやってもいい、そうドゥナットは迫る。
 ルージョンが逡巡していたところにレハトは割り込んだ。
 ドゥナットに翻弄されかけていたルージョンだったが、レハトの登場によって我に返った。
 老魔女は、何か要求されたなら、それを呑まずに諦めて帰ってこいと言っていた、だからもういいと言い切る。
 ドゥナットはその場から去っていき、ルージョンもまた、
 レハトに先ほどの会話について触れられたくないからと逃げ去っていこうとした。
 情緒不安定な様子のルージョンを放っておけず、レハトは彼女を引きとめて抱きしめた。
 ルージョンはわずかに抵抗して見せたが、すぐに大人しくなり、熱があったらしく倒れた。
 
 222 名前:冠を持つ神の手 ルージョン愛情A 4/5[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 02:04:55 ID:VhMcrR7Z
 数日後の晩、意識を取り戻したルージョンは部屋を抜け出し、城を囲む湖のもとまで走って行った。
 そのままの調子でルージョンは魔術を用いて湖の水面の上を走っていく。レハトも見よう見まねで追いかける。
 追手のレハトに動揺したのか、まだ体調が万全でないのか、ルージョンは途中で失敗して水没したが、
 レハトはなんとかルージョンを引きずり歩き、向こう側の岸にまでついた。
 ルージョンは、寝込んでいる間に老魔女の病が悪化していないか心配していたようだったが、老魔女はまだ生きていた。
 ドゥナットから探し物を取り返せないと諦めたルージョンはもう城にくるつもりはないらしい。
 レハトはそれでもルージョンに会いたいからと、今度は自分がちょくちょく城を抜け出してはルージョンを訪ねるようになった。
 
 ルージョンの探し物は、魔術書の切れはしであるらしい。それをドゥナットが持っているのだ。
 城にやって来てから、ルージョンに教わった魔術だけでなく、武術の腕も磨いていたレハトは、
 なんとかふいをついて、ドゥナットから紙切れを奪う事に成功した。
 お前に書かれていることが理解できるのなら渡す気など起きないはずだ、ドゥナットはそう笑いながら去って行った。
 
 レハトはルージョンのもとを訪れる。ルージョンは看病疲れで眠っており、老魔女がレハトの相手をしてくれた。
 例の紙切れを老魔女に渡すと、彼女は血相を変え、その紙切れを燃やしてしまった。
 こんなもの無い方がいいのだと老魔女は言う。
 老魔女がルージョンを城に送り込んだのは、本当はルージョンをティントアと会わせるためだった。
 鳥の視界を介することが出来る老魔女は、ティントアが城にいることを知り、
 実兄と再会させることで魔術師という忌まれた職からルージョンの足を洗わせようと考えていた。
 しかし、ルージョンは帰ってきてしまった。ルージョンは老魔女を実の親のように愛していた。
 「魔術師が善意で子供を拾うはずがないのに馬鹿な子だ」
 老魔女は、自分が亡くなった後はこの子を頼むとレハトに言った。
 
 レハトが城に来てから一年がすぎようとしていた。
 一年が経てばレハトは大人になり、今後の処遇も決められる。
 その前日、レハトはいつものように城を抜け出してルージョンのもとを訪ねた。
 ルージョンは何故かひどく取り乱し泣きじゃくっていた。
 
 223 名前:冠を持つ神の手 ルージョン愛情A 5/5[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 02:07:09 ID:VhMcrR7Z
 老魔女は今まさに死にゆこうとしていた。ルージョンは泣きながらつぶやく。
 ドゥナットが持ち出した紙切れがあれば老魔女を助けることができるのに、
 幼いころに嫌がらずに最後までドゥナットの命令に従っていれば手に入れられたのに、と。
 自分がなんのために拾われたかわかっていた、そのために使われることを望んでいたのに、
 どうして使わなかったのだと、ルージョンは老魔女にすがりつく。
 「まずそうだったからに決まってるだろ。……特に、後味が悪そうだったからさ」
 やがて、老魔女は息を引き取った。ルージョンは、今度はレハトに縋りつき、泣いた。
 辺りはすっかり暗くなり、そろそろ城に帰らなければ怪しまれる頃合いになっていた。
 「帰ら……ないで……」
 泣きながら言うルージョンを放っておけず、レハトはそこに留まり続けた。
 抜け出た事が知られればもう城に戻れないと知りながらも、レハトはルージョンを選んだ。
 
 目覚めると、年が明けてレハトは15歳になっていた。
 性分化に必要なのは神殿での宣誓ではなく、男女いずれを選ぶかの固い意志。
 レハトは、家の地下室に行き、ルージョンと二人きりで性分化の儀式を行った。
 男を選ぶと、レハトはルージョンに告げた。
 
 それからしばらくして、性分化は無事に終わり、レハトは男となった。
 城からの追手はまだ見えないが、魔術師として生きるからにはどちらにせよ隠れ住まうのが前提だった
 ルージョンと二人きりで、魔術を教わりながらレハトは日々を送っていた。
 性分化以来、レハトの背丈はぐんぐん伸びて、すぐにルージョンを追い越した。
 「あーあ、ちょっと前までは、小さくて可愛かったのにねえ。
  男なんか選ぶから、こんなことになって。……本当、何で選んだんだか。
  色々勝手が違って面倒臭いったらありゃしないよ。
  あ、べ、別に答えなくていいからね。お前に答えさせると、ろくなことがない。
  どうせろくでもないことしか考えちゃいないんだから」
 まだルージョンは老魔女の死を引きずっている様子で、態度には無理をしているところが見られた。
 もう少ししたら自分の気持ちを伝えようと、そうレハトは思うのだった。
 
 終わり
 
 224 名前:冠を持つ神の手 ルージョン愛情A 短縮版[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 02:14:56 ID:VhMcrR7Z
 無性別で生まれて15歳で成人してから性分化するという人種が治める王国が舞台。
 主人公のレハトは14歳でまだ性未分化。
 レハトは18歳の魔術師の女・ルージョンと出会い、彼女に魔術を教わるようになる。
 魔術の存在が一般的ではなく、忌まれたものとして扱われている世界で、
 諸事情あって仕方なく魔術師となったルージョンは色々負い目があってツンツンしてるが、段々レハトと打ち解ける。
 ルージョンは性別選択をする余地すらなく、ロリコンに襲われかけたショックで、
 自動的に女性へと変化したというトラウマな過去を持ち、恋愛には拒絶反応が強かったが、
 自分を育ててくれた恩人の死という最も辛い状況の中で側にいてくれたレハトを愛するようになる。
 レハトもルージョンを愛し、魔術師になることを決意し、男性を選択してルージョンと暮らしていく道を選んだ
 
 終わり
 

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